業界ごとのデザインガイドラインまとめ(大学編)

活用事例
2022/11/24

大学のデザインガイドライン

近年、教育業界では教材やコミュニケーションツールとしてICTの導入が進められるとともに、グローバルな視野で事業が展開されており、特に大学や企業が提供する教育サービスの中でデザインガイドラインやデザインシステムが活用される機会が広がっています。ここではロゴマークの整備など、大学の広報活動などに関連するデザインガイドラインの事例として、国内の5つの取り組みをご紹介します。

 

1)東京大学

東京大学「マーク使用規定、表現規定」

東京大学:マーク使用規定、表現規定

東京大学では2004年の国立大学法人化を契機として「東大マーク」を制定し、その使用方法に関するガイドラインを用意しています。同大学では以前から銀杏をモチーフとしたマークを伝統的に使用してきましたが、使われる場面によって細部が異なっており、統一されたものではありませんでした。そこで従来から親しまれてきた銀杏のモチーフはそのままに新たなマークを制定し、ホームページ、封筒、レターヘッド、名刺といった様々なツールでの活用を想定したガイドラインを公開しています。

教職員数 約11500名 / 学生数 約27000名
デザインシステムの目的 伝統的に使用されていたロゴマークのアップデートとビジュアルアイデンティティの統一

 

2)名古屋大学

名古屋大学「名大マーク」

名古屋大学名大マーク

名古屋大学ではグローバル社会における発信力の向上を目指し、2012年に「名大マーク」と呼ばれるシンボルマーク及びロゴタイプを制定しています。同大学では数十年前からスクールカラーとして濃緑を使用してきましたが、1998年に「NUマーク」と呼ばれる学章を制定した際は色彩に関する規定を設けていませんでした。そこで「名大マーク」の制定にあたっては、濃緑を基調とした「NUグリーン」と呼ばれる色彩を定義するとともに、レターヘッドや封筒などでの活用を想定したマニュアルなども作成し、Webサイトで公開しています。

教職員数 約5600名 / 学生数 約15700名
デザインシステムの目的 グローバル社会における発信力の向上とビジュアルアイデンティティの統一

 

3)東京藝術大学

東京藝術大学「ユニバーシティ・アイデンティティ」

東京藝術大学ユニバーシティ・アイデンティティ

東京藝術大学では2017年の創立130周年を契機として、大学呼称・ロゴ・スクールカラーを制定しています。他大学の事例と同様に高等教育機関の国際化を背景としていますが、同大学の略称である「東京芸大」は日本国内で既に広く知られており、ロゴマークや色彩とともに「TOKYO GEIDAI」を大学呼称として制定している点は大変ユニークと言えそうです。

教職員数 約400名 / 学生数 約3300名
デザインシステムの目的 研究・教育実績の世界的発信への寄与

 

4)慶應義塾大学

慶應義塾大学「ロゴマーク」

慶應義塾大学ロゴマーク

慶應義塾では2005年にビジュアル・アイデンティティの整備に取り組んだのち、2015年にはグローバルなブランド価値を高めていくためにガイドラインの改定を行なっています。その際、従来は既存の書体を使用していた学校名の表記についてオリジナルのロゴタイプを用意するとともに、色彩についても国際的に通用する特色を定義するなど、グローバルな展開を見据えた具体的な取り組みを進めています。

教職員数 約6000名 / 学生数 約33600名
デザインシステムの目的 利用者の利便性向上及びグローバルなブランド価値向上への寄与

5)早稲田大学

早稲田大学「ロゴマーク」

早稲田大学ロゴマーク

早稲田大学では創立125周年にあたる2007年に、University Identity システム(UIシステム)を導入するとともに、デザインガイドラインを定めて展開しています。「125」というタイミングや角帽をモチーフとしたシンボルなど、様々な点で早稲田大学の独自性を表現しています。

教職員数 約5500名 / 学生数 約50000名
デザインシステムの目的 次代に向けたアイデンティティの確立

 

まとめ

このように、近年では大学のグローバル化を背景として、教育機関ごとにデザインに関する規定が整備されつつあります。情報サービス業界におけるデザインシステムの事例とは異なる特徴として、既に長年に亘って使用されてきた図案や色彩を改めて形式知として定義している事例や、封筒やレターヘッドといったアナログな媒体での利用を想定した事例が少なくないことが挙げられます。こうしたガイドラインを整備・公開することで、学生や教職員だけでなく、多数の卒業生や将来の入学を目指す若者など、大学に関わる多くの人々への訴求力が一層高まるのではないでしょうか。